2013年1月1日

ビタミンD
-ビタミンDは活性化されて働く!-


北欧や雪国など日照時間の少ないところではくる病(骨に変形や成長障害がおこる病気)は珍しくありませんでした。原因が活性型ビタミンD不足と言うことがわかり、栄養の補給によって今ではかなり少なくなりましたが、なぜ日光に当たらないと活性型ビタミンD不足になるのでしょうか?

体内で合成されたビタミンDはプロビタミンD→プレビタミンD→ビタミンDの順に代謝されます。プロビタミンDからプレビタミンDへの代謝に必要なのが紫外線です。()




紫外線がないとせっかく作ったプロビタミンDはコレステロールに変換してしまいます。また腸から吸収された食品中のプロビタミンDもコレステロールに変わってしまいビタミンDとしての効果を発揮することが出来ません。そこで生まれた工夫が干しシイタケのような天日干しです。プレビタミンDまで変えておけば体内でビタミンDとして利用することが出来ます。ただし紫外線が大切なので室内干しや機械で乾燥しただけでは効果がありませんよ!

さて、ビタミンDは肝臓で25(OH)Dに、腎臓で1,25(OH)2D、または24,25(OH)2Dの形になります。一般に活性型ビタミンDと呼ばれているのは1,25(OH)2Dで、腸や腎臓でのカルシウムの吸収や骨の形成に作用します。このように活性化のステップが多いので紫外線、肝臓、腎臓のどこが具合が悪くても活性型ビタミンD不足になります。


これまでは骨やカルシウムの関係だけに注目されていた ビタミンDですが、最近は免疫調整や遺伝子の発現などへの新しい役割が次々発見されています。そして1,25(OH)2Dだけではなく25(OH)Dも重要であることや必要量がこれまで考えられていたより多いことなどがわかってきました。次回は新しく発見されたビタミンDの役割について解説します。花粉症の方は必見です!

暮らしに役立つ栄養療法
-遅延型食物アレルギーとLGS(腸管壁浸漏症候群)②-


遅延型食物アレルギーが起こるそもそもの原因として、腸の粘膜の状態や腸の栄養、腸内細菌のバランスが悪くなって腸が本来のバリア機構を果たせなくなっていることが挙げられます。本来腸の粘膜細胞は隣同志と強固に結びついて細胞の隙間を勝手に物質が通れないようになっています。厚いムチン層は物理的なバリアを形成し、ムチン層には消化管内の異物を見張るIgA抗体も多数存在していて、正常な粘膜ではおいそれと異物や毒物が体内に入らないようになっています。




ところが、腸の細胞の働きを助ける栄養素が不足したり、悪玉菌が増えすぎたりするとこのバリアが薄くなったり隙間が出来たりします。また消化能力も低下するので未消化の大きな分子が隙間から体内に入り込んでしまいます。このような状態をLGS(リーキーガットシンドローム・腸管壁浸漏症候群)と呼んでいます。腸内細菌叢の中でもカンジダや酵母は細胞を傷つけやすいのでLGSの原因になります。

LGSの持つ問題点は、              

      大きな未消化分子が体内に入って遅延型食物アレルギーを起こすことがある

      グルテン(小麦蛋白)やカゼイン(乳蛋白)由来のペプチドが脳に作用することがある

      ぶどう糖のような小さな分子は通りやすく血糖値の乱高下を起こす(機能性低血糖症)

      カンジダや酵母、その他由来の有害物質が入り全身に症状を起こす

      腸内細菌の乱れが腸の免疫機構の異常を起こし全身の 免疫に影響する

東洋医学に胃脾を整えるという考え方がありますが、LGSを見ていると腸を改善することが病気を改善することにつながることがよくわかります。食物アレルギー、機能性低血糖症などを持っている人は腸の状態を改善しない限り本質的な改善はないと言ってもよいでしょう。

高蛋白食を開始しても体調が改善しなかったり以前よりも体調が悪くなった方は、LGSに伴う食物アレルギーが原因の可能性があります。腸内細菌バランスを改善し、正常な消化吸収能力、正常なバリア機構をもった腸を作ることからゆっくりと始める必要があります。

次回は健全な腸を取り戻していくにはどうしたらよいかを説明しましょう。

自己免疫疾患 ①
-間違えて自分を攻撃する病気-


免疫とは、体に本来はない異物を「自分ではない」と認識して攻撃し排除する働きのことです。感染の原因となるウイルスや細菌、体の中で出来た異常な細胞などを監視して排除するこの免疫は健康を維持するうえで欠かせないものですね。

ところが何らかの原因によって自分の体のある部分を「異物」と間違えて攻撃してしまうようになる病気が自己免疫疾患です。 

 例えば神経の髄鞘(神経細胞の周囲を囲んでいる鞘)が攻撃対象になった場合は、その神経の情報伝達がうまくいかず、視覚障害、しびれ、麻痺などがおこります。受容体に対する抗体が出来ると信号がうまく伝わらなかったり、逆に抗体刺激を信号と勘違いして信号が伝わりすぎたりします。

細胞と細胞をつなぐ結合組織にある分子が攻撃対象になった場合は、もっと複雑な症状が出ます。結合組織の分子は全身に分布しているので、皮下組織や血管、筋肉、それから肺や腎臓などの臓器も攻撃対象になってしまいます。全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎、シェーグレン症候群などがそれにあたります。

関節リウマチは人口の約0.5から1%がかかるポピュラーな病気なので古くから熱心に病因や治療法の研究がすすめられてきました。関節リウマチでは関節腔を包む滑膜に強い炎症が起こり近くの軟骨や骨が炎症によって壊れたり、関節以外にも眼や肺、腎臓などに炎症が起きたりします。複数の自己抗体が見つかっていましたが、標的になる分子にある特徴があることがわかってきました。それがシトルリン化された蛋白です。シトルリンはたんぱくを構成するアミノ酸の一つアルギニンが酵素によって変換されたものです。シトルリン化された蛋白に対する抗体(抗CCP抗体)を測定することで、リウマチの早期発見、治療の判断がかなり容易になりました。
 
 

自己免疫疾患の治療は過剰な免疫反応を抑えることが主眼になります。炎症物質の産生を抑える抗炎症薬、炎症物質のおおもとを抑え免疫全体を抑制する副腎皮質ホルモン、病状によっては免疫抑制剤、抗リウマチ薬(免疫調整の作用を持つ)も使用します。最近の治療の進歩としては、免疫反応の指令を伝える物質(TNFαIL-6など)の働きを阻害する生物学的製剤が使用できるようになりました。

このような進歩によって自己免疫疾患の症状や病状はかなり改善できるようになりましたが、薬の副作用をなくすところまではいっていません。自己免疫疾患はなぜおこるのか、発症を予防することは出来るのか?次回は体の免疫調整機構に迫ってみたいと思います。