2010年6月1日

なぜサプリメントが必要か?

 最近、サプリメントの害についての警告が目立ちます。自分たちが批判されているようで大変悲しい思いをしますが、皆さんにも知っておいていただきたいことが二つあります。


 一つはサプリメントと一口で言ってもその質は玉石混淆で、製造過程が本当に信頼できるのか、効果のある物質が含まれているのかはメーカーによっておそらくかなり異なります。もう一つは、効果についてです。私たちの行っている栄養療法は「××を飲めば○○が治る」などという簡単な言葉で語れるものではありません。実践する方に理論と方法、効果の意味を正しく理解いただいて成立するものです。前回の繰り返しになりますが、栄養療法の本質の一端を今回もう一度聞いていただきたいと思います。

 分子整合栄養医学の「分子整合(orthomolecular)」はとても深い意味を持っています。orthoは「正しい」molecularは「分子の」という意味です。体の隅々まで――細胞内、血液内、細胞間液にいたるまで「(分子のレベルで)本来のあるべき状態にする」ことがこの治療の本質です。

 皆さんは治療を受ける時に「病名」というのを気にしますよね。むしろドクターにその傾向が強いかもしれません。「分子整合」栄養医学は目指すところがちょっと違います。「体の機能、物質の合成、体内に存在する物質の量」を「理想のこうあるべきだという状態にすること」です。どんなにたくさんの癌細胞を持っていようとも、肺気腫のようにもとにもどりにくい病気を持っていようとも「体が十分な機能を発揮してくれれば」人間は幸福に生きられます。相手を完全にやっつけて治すのとはちょっと「治す」の定義が違うかもしれません。癌の化学療法医の中にはサプリメントを目の敵のようにしている方がいますが、栄養療法は手術、化学療法、放射線療法などをサポートする手段にもなり得ます。

 サプリメントについて批判する多くの方は、栄養療法がサプリメントを使用する理由を本当にはご存じないのではないでしょうか?理想の状態を実現するのに「サプリメントなしでは不可能な人がいる」のでサプリメントを使用しています。食事だけ、サプリメントなしで実現できればそれに越したことはないのです。

 実際問題、理想の状態を実現するには大変な困難が伴います。本人が本気になって食事に取り組むのはもちろんのこと、現実にはほとんどの方で複数のサプリメントが必要になります。症状が重い方ほど量も種類もたくさん必要になり、生活金銭面にかなり負担になっていることは承知しています。「遺伝的体質はこんなにも不公平なのか」と呪いたくなる瞬間です。それでも栄養療法は人々に希望を与えると信じています。しっかりとした方向性があり努力が報われ、実行すれば実行するほど意欲がわいてくる素晴らしい治療法です。栄養療法を選択した方すべてが、分子整合栄養医学の本質を理解し「Co-learner(共に学ぶもの)」として歩んでくれることを望みます。

「栄養素は一つのチームとして働く。必須栄養素は鎖でできた首飾りのようなものだ(生命の鎖)」

ロジャー・J・ウイリアムズ